【最新版】EAP料金の相場は?導入効果と費用対効果から考える最適な選び方
EAP(従業員支援プログラム)の料金相場は企業規模や内容によって異なります。本記事では、EAPの料金体系、費用対効果、導入メリットを徹底解説。メンタルヘルス対策における投資としての価値を示すデータもご紹介します。
はじめに
従業員のメンタルヘルス対策が企業の重要課題となる昨今、EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)の導入を検討する企業が増えています。しかし、「具体的にいくらかかるのか」「本当に効果があるのか」「コストに見合うのか」という疑問を抱える経営者や人事労務担当者も少なくありません。
厚生労働省の調査によると、労働者の60%以上が職業上で強いストレスを感じているという結果が示されています。また、2021年には過去最多となる2,346件の労働者がメンタルヘルス障害で労災申請をしました。このような状況下で、EAPは企業と従業員双方にとって重要な支援システムとなっています。
本記事では、EAPの料金相場から費用対効果、選び方のポイントまで、導入を検討する企業担当者に役立つ情報を詳しく解説します。
EAP(従業員支援プログラム)の料金相場
日本におけるEAP料金相場
日本におけるEAPの料金相場は、一般的に従業員一人あたり月額数百円から1,500円程度となっています。ただし、この価格帯は提供されるサービス内容や、企業規模によって大きく変動します。
具体的な料金相場のおおよその目安は以下の通りです:
- 基本的なEAPサービス:従業員一人あたり月額400円〜800円程度
- 充実したサービス内容:従業員一人あたり月額800円〜1,500円程度
- カスタマイズされた包括的なプログラム:要相談(1,500円以上)
海外におけるEAP料金相場との比較
海外、特に欧米におけるEAPの料金相場と比較すると、日本の料金水準はやや低い傾向にあります。
- 英国:従業員一人あたり月額約40ペンス〜£1.25(約75円〜235円)
- 米国:従業員一人あたり月額$10〜$50(約1,500円〜7,500円)
この差は、サービス内容の違いだけでなく、メンタルヘルスケアに対する社会的認識や浸透度の違い、労働環境の違いなども反映しています。米国では特に包括的なEAPサービスが一般的であり、それに伴ってコストも高くなる傾向にあります。
企業規模による料金差
EAPの料金は企業規模によっても異なります。一般的に、従業員数が多い大企業ほど一人あたりの単価は低くなる傾向にあります。これはスケールメリットが働くためです。
- 大企業(1,000名以上):一人あたり月額400円〜800円程度
- 中堅企業(300〜999名):一人あたり月額600円〜1,000円程度
- 中小企業(300名未満):一人あたり月額800円〜1,500円程度
小規模企業では、従業員数が少ないために一人あたりのコストが高くなることがありますが、近年では中小企業向けの手頃な料金のEAPサービスも増えてきています。
EAPの主な料金体系モデル
EAPサービスを提供する企業は、いくつかの異なる料金モデルを採用しています。それぞれの特徴を理解し、自社に最適なモデルを選ぶことが重要です。
一人あたり固定料金型(Per Employee)
最も一般的な料金モデルで、従業員一人あたりの月額または年額で課金されるタイプです。企業の従業員全員がサービスを利用できる権利を持ち、実際の利用率に関わらず定額料金を支払います。
メリット:
- 予算計画が立てやすい
- 従業員全員が制限なくサービスを利用できる
- 利用促進活動を積極的に行える
デメリット:
- 実際の利用率が低いと、コストパフォーマンスが悪くなる可能性がある
従量課金型(Pay-Per-Use/Call)
電話相談や基本サービスには固定料金を設定し、対面カウンセリングなど追加サービスを利用した場合に追加料金が発生するモデルです。また、電話相談一件ごとに料金が発生するタイプもあります。
メリット:
- 実際の利用量に応じた支払いになるため、利用が少ない場合はコスト抑制になる
- 必要なサービスだけを選択できる柔軟性がある
デメリット:
- 利用が増えると予算を超過する可能性がある
- 従業員が費用を気にして必要なサポートを利用しなくなる恐れがある
組み合わせ型
基本サービスは一人あたり固定料金で、特定の追加サービスのみ従量課金となるハイブリッドモデルです。
メリット:
- 基本的なニーズは確実にカバーしつつ、追加サービスは必要に応じて利用できる
- 予算計画と柔軟性のバランスがとれている
デメリット:
- 料金体系が複雑になることがある
- 追加料金の発生条件を従業員に正確に伝える必要がある
包括固定料金型(Capitated Model)
企業規模に関わらず、年間契約で固定金額を支払うモデルです。大企業向けのオプションとして提供されることが多く、料金は$15,000〜$40,000(約225万円〜600万円)程度からとなります。
メリット:
- 大規模な組織での一貫したサービス提供が可能
- 利用量に関わらず予算が固定される
デメリット:
- 中小企業には高額になる場合が多い
- 従業員一人あたりのコストが見えにくい
料金モデルを選ぶ際は、自社の従業員数、予算、想定される利用率などを考慮し、最適なものを選択することが重要です。
EAP導入による費用対効果
EAP導入の判断において、コストだけでなく得られる効果(リターン)を理解することが重要です。実際のデータに基づく費用対効果を見てみましょう。
プレゼンティーイズムとアブセンティーイズムの改善効果
メンタルヘルスの問題は、大きく分けて2つの形で企業の生産性に影響します:
- アブセンティーイズム:心身の不調による欠勤
- プレゼンティーイズム:出勤はしているものの、心身の不調により生産性が低下している状態
日本における研究では、これらの健康関連の生産性損失コストの内訳は以下のとおりです:
- プレゼンティーイズム:64%(従業員一人あたり年間約3,055ドル≒約46万円)
- アブセンティーイズム:11%(従業員一人あたり年間約520ドル≒約7.8万円)
- 医療・薬剤費:25%(従業員一人あたり年間約1,165ドル≒約17.5万円)
特にプレゼンティーイズムによる損失は、全体コストの約64%を占めており、見えにくい損失が大きいことがわかります。
投資対効果(ROI)の数値
海外の研究では、メンタルヘルス支援プログラムの投資対効果(ROI)は、投資1ドルあたり2.3ドル〜4ドルのリターンがあるとされています。また、英国のEmployee Assistance Professionals Associationによれば、EAPへの投資1ポンドあたり平均7.97ポンドのリターンがあるという調査結果もあります。
日本においても、メンタルヘルス問題による経済損失は年間約2.7兆円にのぼると推計されており、適切な対策を講じることによる潜在的な経済効果は非常に大きいといえます。
導入企業における具体的な効果
実際にEAPを導入した企業では、以下のような効果が報告されています:
- 欠勤率の減少:3〜16%
- 離職率の低下
- 生産性の向上
- 従業員満足度の向上
- 労災申請の減少
特に、早期介入によるメンタルヘルス不調の重症化予防は、長期休職や離職を防ぐことにつながり、採用コストや業務引継ぎコストの削減にも貢献します。
EAPサービス内容と料金の関係性
EAPの料金は提供されるサービス内容によって大きく変わります。ここでは、主なサービスの種類と、それに伴う料金の違いを解説します。
基本サービスと追加オプション
基本サービス(標準的に含まれるもの)
- 電話相談窓口(24時間対応の有無で料金差あり)
- オンライン相談
- 情報提供サービス(ウェブサイト、ニュースレターなど)
- 基本的なストレスチェック
追加オプション(別料金となることが多いもの)
- 対面カウンセリング(セッション数によって料金変動)
- 専門家(精神科医、弁護士、金融アドバイザーなど)への紹介
- 管理職向けトレーニング
- メンタルヘルス研修
- 組織診断・職場環境改善コンサルティング
- 危機介入サービス
サービスレベルによる料金差
同じようなサービスでも、質やアクセシビリティによって料金は変わります:
- 相談対応時間:営業時間内のみか、24時間365日対応か
- 対応言語:日本語のみか、英語など多言語対応があるか
- カウンセラーの質:資格保有者の割合、経験年数など
- セッション数:無料で利用できるカウンセリングセッション数
- 対応範囲:従業員本人のみか、家族も含むか
- アクセス方法:電話のみか、メール、チャット、アプリなど多様な選択肢があるか
必要なサービスの見極め方
自社に最適なEAPサービスを選ぶポイントは以下の通りです:
- 従業員の特性とニーズ:年齢層、家族構成、勤務形態(リモートワークの割合など)
- 組織の課題:現在直面している問題(高ストレス、離職率の高さなど)
- 予算との兼ね合い:コストと期待される効果のバランス
- 利用しやすさ:従業員が実際に利用したくなるサービス設計
- プライバシー保護:情報の取り扱いに関する信頼性
必要なサービスを絞り込み、優先順位をつけることで、コストパフォーマンスの高いEAPプランを選択できます。
企業規模別EAP導入の費用対効果
企業規模によって最適なEAP導入アプローチは異なります。ここでは、規模別の特徴と費用対効果を最大化するポイントを解説します。
大企業(1,000名以上)
特徴:
- スケールメリットがあり、一人あたりのコストは比較的低くなる
- 多様な部署や職種があり、ニーズも多様
- 内部リソース(人事部、産業医など)との連携が重要
費用対効果を高めるポイント:
- 部署ごとの特性に合わせたカスタマイズ
- 階層別(管理職向け、一般社員向けなど)のプログラム設計
- 内部EAPと外部EAPの併用も検討
- 利用状況の定期的な分析と改善
中堅企業(300〜999名)
特徴:
- 一定のスケールメリットはあるが、サービスの取捨選択が必要
- 組織の成長に伴い、メンタルヘルス対策の体系化が求められる段階
費用対効果を高めるポイント:
- コア従業員層に焦点を当てたサービス設計
- 利用促進のための社内コミュニケーション強化
- 経営層の理解と支援の獲得
- データ活用による効果測定
中小企業(300名未満)
特徴:
- 一人あたりのコストは比較的高くなりがち
- 予算制約がある中で効果的なサービスを選ぶ必要がある
- 経営者や人事担当者の負担軽減という側面も大きい
費用対効果を高めるポイント:
- 必要最低限のサービスに絞ったプラン選択
- 中小企業向けの低コストプランの活用
- 複数の小規模企業での共同契約の検討
- 公的支援制度の活用(助成金など)
規模に関わらず重要な点
企業規模に関わらず、以下の点はEAPの費用対効果を高める上で重要です:
- 従業員への周知徹底:いくら良いサービスでも、知られていなければ利用されない
- プライバシー保護の保証:利用者情報が会社に知られないという信頼感の醸成
- 経営層のコミットメント:メンタルヘルス対策の重要性に対する経営層の理解と支援
- 定期的な評価と改善:利用状況や効果の測定、フィードバックの収集と改善
LivelyEAP:コストパフォーマンスに優れた「カジュアルEAP」
従来型のEAPサービスに新たな選択肢を提供するLivelyEAPは、「カジュアルEAP」という新しいアプローチで注目を集めています。
LivelyEAPの特長
LivelyEAPは、アクティブリスニング(積極的傾聴)を中心とした新しいタイプの従業員支援プログラムです。主な特長は以下の通りです:
- カジュアルさ:深刻な不調だけでなく日常的なストレスやパフォーマンス向上も対象
- 予防的アプローチ:問題の深刻化を防ぐ早期ケア
- アクセシビリティ:オンライン、匿名で利用ハードルを低減
- 研修連携:アクティブリスニング研修と組み合わせた組織全体のケア
従来型EAPは問題が深刻化してからの対応が中心でしたが、LivelyEAPは日常的なストレス軽減から対応し、問題の予防と早期解決を図ります。これにより、高額な長期休職や離職のコストを未然に防ぐことができます。
利用によるROI(投資対効果)
LivelyEAPの導入により、以下のような効果が期待できます:
- プレゼンティーイズムの改善:日常的なストレスケアによる生産性向上
- 早期発見・早期対応:問題の重症化予防による長期休職の減少
- 職場環境の改善:コミュニケーション活性化による組織パフォーマンス向上
- エンゲージメント向上:会社からのケアを実感することによる帰属意識の強化
具体的な数値としては、導入企業における欠勤率の減少(平均10%程度)や離職率の低下(特に若手層で顕著)などが報告されています。
まとめ:最適なEAPを選ぶためのポイント
EAPの料金相場と費用対効果について見てきましたが、最後に最適なEAP選びのポイントをまとめます。
コスト面で考慮すべきこと
- 総合的なコスト把握:月額料金だけでなく、導入コスト、追加料金の可能性も含めて検討
- 予算との兼ね合い:無理のない範囲で継続できるプランを選択
- スケーラビリティ:企業成長に応じて柔軟に調整できるか
効果を最大化するポイント
- 自社の課題に合ったサービス:現在の組織課題に対応できるプログラム内容
- 利用のしやすさ:従業員が抵抗なく利用できる仕組み
- プライバシー保護:利用者情報の適切な管理
- 継続的な改善:利用状況や効果の測定、フィードバックの収集と改善
投資としての視点
EAPはコストではなく、企業と従業員の健康と生産性への投資として捉えることが重要です。メンタルヘルス不調によるコストは目に見えにくいものの、実際には大きな損失となっています。適切なEAP導入による早期介入と予防は、長期的に見れば大きなリターンをもたらします。
LivelyEAPの「カジュアルEAP」は、従来のEAPの枠を超え、より身近で効果的なメンタルヘルスサポートを提供します。料金体系の透明性と柔軟性、そして予防的アプローチによるコストパフォーマンスの高さは、多くの企業に新たな選択肢を提供しています。
LivelyEAPのサービス内容や料金体系について詳しく知りたい方は、ぜひ資料請求フォームからお問い合わせください。貴社に最適なプランをご提案いたします。
参考文献
- 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(2023年)
- 日本EAP協会「EAPの定義と効果に関する報告書」
- Nagata, T., et al. “Total Health-Related Costs Due to Absenteeism, Presenteeism, and Medical and Pharmaceutical Expenses in Japanese Employers.” (2018)
- 日本経済産業省「健康経営優良法人認定制度」(2024年)
- Sonder “Understanding the Cost of Employee Assistance Programs (EAP) & Their Value” (2025年1月)
- Health Assured “How much does an Employee Assistance Programme (EAP) Cost?” (2024年)
- Statista “Mental health in Japan – statistics & facts” (2024年)
- 厚生労働省「脳・心臓疾患の労災補償状況」(2023年)
- Institute of Directors “Employee assistance programmes and mental health” (2024年3月)
- JCER “Mental Health and Workstyle in Japan” (2024年)