ストレスチェック代行サービスの選び方完全ガイド | 費用相場からEAP連携まで

ストレスチェック代行サービスの選び方、費用相場、メリット・デメリットを徹底解説。法令遵守と効果的なメンタルヘルス対策のためのポイントをご紹介します。

目次

はじめに

企業におけるメンタルヘルス対策の重要性が高まる中、2015年に労働安全衛生法が改正され、一定規模以上の企業ではストレスチェックの実施が義務化されました。しかし、多くの企業では専門知識や人員の不足から、ストレスチェックの実施に苦慮しているのが現状です。

そこで注目されているのが「ストレスチェック代行サービス」です。外部の専門機関に委託することで、法令遵守はもちろん、効果的なメンタルヘルス対策の実現が可能になります。本記事では、ストレスチェック代行サービスの選び方から費用相場、さらにはEAP(従業員支援プログラム)との連携まで、企業の人事担当者が知っておくべき情報を徹底解説します。

ストレスチェック制度の概要と法的義務

ストレスチェック制度が誕生した背景

ストレスチェック制度は、職場におけるメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的として導入されました。2009年から2012年にかけて、仕事のストレスが原因で精神障害を発症し、労災認定される労働者が3年連続で過去最高を記録したことが背景にあります。こうした状況を受け、労働安全衛生法が改正され、「労働安全衛生法第66条10項」に基づき、2015年12月以降、ストレスチェックの実施が義務化されたのです。

実施義務のある事業場と実施頻度

ストレスチェックの実施が義務付けられているのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。一方、労働者が50人未満の事業場については、努力義務となっています。

実施頻度は「1年以内ごとに1回」と定められており、毎年定期的に実施する必要があります。実施時期については、事業場が自由に設定することができます。

罰則規定と報告義務

ストレスチェックの実施結果については、労働基準監督署への報告が義務付けられています。「労働安全衛生法第120条」によると、50人以上の従業員を抱える事業場では、ストレスチェック結果を労働基準監督署に報告しなければ、50万円以下の罰金を科される可能性があります。

また、ストレスチェックが未実施の場合、メンタルヘルス不調の労働者が発生すれば、安全配慮義務違反となる可能性もあります。法令違反のリスクを避けるためにも、適切なストレスチェックの実施体制を整えることが重要です。

ストレスチェック代行サービスとは

代行サービスの定義と委託できる業務範囲

ストレスチェック代行サービスとは、企業に代わって、外部の専門機関がストレスチェックの実施を支援するサービスです。具体的には、以下のような業務を外部に委託することができます。

  • 実施者(医師・保健師など)の代行
  • 設問の用意・調査票の作成
  • ストレスチェックの実施
  • 結果の回収・集計
  • 労働者への結果通知
  • 集団分析
  • 面接指導の実施
  • 相談窓口の設置

ただし、すべての業務を委託できるわけではありません。以下の業務は企業側で行う必要があります。

  • ストレスチェック担当者の決定
  • 衛生委員会での審議
  • 社内規程の整備
  • 労働者への周知
  • 面接指導を行った医師からの意見聴取
  • 高ストレス者への就業措置
  • 職場改善の実施

サービスの形態と種類

ストレスチェック代行サービスには、主に以下の形態があります。

  1. Web方式:オンラインでストレスチェックを実施するタイプ。スマートフォンやPCから回答でき、データ集計も自動化されるため効率的です。
  2. 紙方式:紙の調査票を配布して実施するタイプ。PCやスマートフォンの操作に不慣れな従業員がいる場合に適しています。
  3. ハイブリッド方式:WebとACを併用するタイプ。従業員の希望や環境に応じて選択できます。

代行サービスを提供する企業としては、以下のようなタイプがあります。

  • 産業保健サービス企業
  • ヘルスケア企業
  • EAP(従業員支援プログラム)提供企業
  • ITシステム企業(ストレスチェックシステムを提供)

ストレスチェック代行サービスのメリット・デメリット

メリット

1. 専門性の高いサポート

外部の専門機関は、ストレスチェックに関する豊富な知識と経験を持っています。専門家によるサポートを受けることで、法令に準拠した適切なストレスチェックを実施することができます。また、最新の内容や他社の事例を基にした判断を受けられるメリットもあります。

2. 業務負担の軽減

ストレスチェックの実施には、準備から結果の集計、報告書の作成まで、多くの業務が発生します。外部委託することで、こうした業務負担を大幅に軽減できます。特に、人事部門の人員が限られている中小企業にとっては大きなメリットとなります。

3. 企業側のバイアスがかからない中立的な評価

社内でストレスチェックを実施すると、回答者のプライバシーが守られにくいという懸念があります。外部委託することで、より中立的な立場からの評価が可能となり、従業員も安心して率直な回答ができるようになります。

4. 費用対効果の向上

自社内で全てを実施する場合、専門家の確保や必要なツールの整備にコストがかかる場合があります。代行サービスを利用することで、必要な機能だけを効率よく活用できるため、コストパフォーマンスが向上する可能性があります。

デメリット

1. 外部委託による追加コスト

当然ながら、外部に委託することで費用が発生します。特に小規模な企業では、追加コストの負担が大きくなる可能性があります。

2. 社内事情に合わせたカスタマイズの制限

外部サービスは一般的に標準化されたプログラムを提供するため、自社の事情や文化に細かく合わせることが難しい場合があります。

3. 情報管理のリスク

従業員の個人情報や健康情報を外部に共有することになるため、情報漏洩のリスクについて十分な対策が必要です。

ストレスチェック代行サービスの費用相場

従業員一人当たりの基本料金

ストレスチェック代行サービスの費用相場は、一般的に従業員一人当たり500円〜2,000円程度です。この費用は、企業規模や実施方法などによって大きく変動します。

特に、実施方法(Web方式か紙方式か)による違いがあり、Web方式の方がリーズナブルな傾向にあります。また、従業員数が多いほど一人当たりの単価が安くなるケースが多いです。

追加オプションによる費用の変動

基本料金に加えて、以下のようなオプションサービスが追加費用として発生する場合があります。

  1. 集団分析:部署ごとの分析や職種別の分析など。費用相場は無料〜10万円程度と幅広いです。
  2. 面接指導:高ストレス者に対する医師の面接指導。一人あたり3万円〜5万円程度が相場です。
  3. フォローアップ研修:メンタルヘルス研修やセミナーの実施。1回あたり10万円〜30万円程度が相場です。
  4. システム利用料:Web方式の場合、システム初期設定費用や保守費用が別途必要な場合があります。

コスト削減のポイント

費用を抑えるためのポイントとしては、以下が挙げられます。

  1. 複数年契約の検討:長期契約することで割引が適用される場合があります。
  2. 必要なサービスの見極め:自社で対応可能な業務と外部委託すべき業務を整理し、必要なサービスだけを選択しましょう。
  3. 助成金の活用:中小企業向けに、ストレスチェック実施に関する助成金制度があります。厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック実施促進のための助成金」などを確認しましょう。

ストレスチェック代行サービス選びのポイント

サービス提供範囲の確認

代行サービスを選ぶ際には、どこまでの業務を委託できるのかを明確にしておくことが重要です。以下の点を確認しましょう。

  • ストレスチェックの実施者(医師・保健師など)は提供されるか
  • 集団分析の内容と報告書の質
  • 高ストレス者へのフォロー体制
  • 面接指導の実施方法と対応可能な地域

実績と信頼性の評価

サービス提供企業の実績や信頼性も重要な選定基準です。

  • 導入実績(特に同業種・同規模の企業での実績)
  • 専門スタッフの資格や経験
  • プライバシーポリシーやセキュリティ体制
  • 厚生労働省のガイドラインへの準拠

料金体系の透明性

費用面では、以下の点を確認しておくことをおすすめします。

  • 基本料金に含まれるサービスの範囲
  • オプションサービスの費用
  • 最低契約人数の有無
  • 追加費用の発生条件

システムの使いやすさとサポート体制

Web方式を選ぶ場合は、システムの使いやすさも重要です。

  • インターフェースの直感性
  • 多言語対応の有無
  • モバイル対応状況
  • 技術サポートの対応時間と方法

ストレスチェック後のフォロー体制

ストレスチェックはあくまでも入り口であり、その後のフォローこそが重要です。

  • 高ストレス者への面接指導の実施体制
  • 集団分析結果を活用した職場改善支援
  • 研修やセミナーの提供内容
  • メンタルヘルス相談窓口の設置

EAPとの連携によるメンタルヘルス対策の強化

EAPの概要とメリット

EAP(Employee Assistance Program)は「従業員支援プログラム」と訳され、従業員の心身の健康問題から職場での人間関係、家庭の問題まで、幅広い悩みに対応するサポートプログラムです。元々はアルコール依存症対策としてアメリカで誕生し、日本では1980年代から導入されてきました。

EAPの主なメリットには以下があります。

  1. 早期発見・早期対応:メンタルヘルス不調を早期に発見し、対応することで重症化を防ぎます。
  2. プライバシーの保護:外部の専門家に相談できるため、社内での評価を気にせず相談できます。
  3. 生産性向上:従業員の抱える問題が軽減されることで、モチベーションや生産性が向上します。
  4. 離職率低下:メンタルヘルス不調による休職や離職を防ぐことができます。

ストレスチェックとEAPの効果的な連携方法

ストレスチェックとEAPを連携させることで、より効果的なメンタルヘルス対策が可能になります。具体的な連携方法としては、以下が考えられます。

  1. ストレスチェック結果に基づいたフォロー:高ストレス者に対して、EAPのカウンセリングサービスを案内します。
  2. 集団分析結果の活用:ストレスチェックの集団分析結果を基に、部署ごとの課題に対応したEAPプログラムを提供します。
  3. 予防的アプローチ:ストレスチェックで中・低リスクと判定された従業員に対しても、予防的にEAPのセルフケアプログラムやセミナーを提供します。
  4. 復職支援との連携:休職者の職場復帰に際して、ストレスチェック結果とEAPによるサポートを組み合わせた支援を行います。

LivelyEAPサービスの特徴

LivelyEAPは、従業員のメンタルヘルスを総合的にサポートする従業員支援プログラムです。以下のような特徴があります。

  1. アクティブリスニングを中心としたアプローチ:傾聴を重視したカウンセリングにより、従業員の悩みや問題を丁寧にヒアリングします。
  2. 匿名性と利用しやすさ:実名登録不要で気軽に相談できる環境を提供し、従業員のプライバシーを保護します。
  3. ストレスチェックとの連携:ストレスチェック結果に基づき、高ストレス者への適切なフォローアップを実施します。
  4. 多様なホストによる対応:様々なバックグラウンドを持つカウンセラーが在籍しており、従業員の多様な悩みに対応できます。
  5. カジュアルなメンタルヘルスケア:深刻な不調だけでなく、日常的なストレスや悩みも気軽に相談できる「カジュアルEAP」のスタイルを採用しています。

ストレスチェック代行サービスとLivelyEAPを組み合わせることで、法令遵守としてのストレスチェックから一歩進んだ、従業員の心身の健康を総合的にサポートする体制を構築することができます。

ストレスチェック代行の国際的な動向と最新トレンド

グローバル企業におけるメンタルヘルス対策の取り組み

世界的に見ても、職場のメンタルヘルス対策は重要な課題となっています。特にグローバリゼーションに伴う労働市場の変化や、テレワークの普及によって、新たなストレス要因が生まれています。

国際労働機関(ILO)は、グローバル化や労働市場の断片化、柔軟な契約の需要増加、ダウンサイジングやアウトソーシング、より高いワークロードやプレッシャーなどが、世界中の職場関連ストレスの増加に寄与していると指摘しています。

欧米各国では、従業員のメンタルヘルスケアを重視する企業が増加しており、ストレスチェックを含む包括的なメンタルヘルスプログラムを提供する企業が増えています。特に米国では、EAPの導入が一般的であり、健康保険プランの一部としてメンタルヘルスサービスを提供している企業も多くあります。

テクノロジーを活用した最新のアプローチ

ストレスチェックやメンタルヘルス対策の分野でも、テクノロジーの活用が進んでいます。

  1. AIを活用した分析:AIによるストレスチェック結果の分析や、自然言語処理を用いたコミュニケーション分析により、従業員のストレス状態をより正確に把握する取り組みが行われています。
  2. モバイルアプリケーション:スマートフォンアプリを通じて、日常的なストレス測定やセルフケアの提供、専門家とのチャットカウンセリングなどを実施するサービスが増えています。
  3. ウェアラブルデバイスとの連携:活動量計や睡眠計などのウェアラブルデバイスから得られるデータと、ストレスチェック結果を組み合わせた総合的な健康管理が可能になりつつあります。
  4. オンラインプラットフォーム:従業員が自宅からでもストレスチェックやカウンセリングを受けられるオンラインプラットフォームが普及しています。コロナ禍以降、特にこの傾向が強まっています。

マーケットの成長予測

Workplace Stress Management(職場ストレス管理)の市場規模は2024年において約73億ドルと推定されており、2025年から2030年にかけて年平均成長率4.3%で拡大すると予測されています。企業がメンタルヘルスケアに投資する傾向は今後も継続し、ストレスチェックを含むサービスへの需要は増加すると見られています。

このような国際的な動向を踏まえると、日本企業においても、法令遵守のためだけではなく、従業員の健康増進と組織パフォーマンスの向上を目的とした、より包括的なメンタルヘルス対策の導入が求められているといえるでしょう。

まとめと次のステップ

ストレスチェック代行を選ぶ際のチェックリスト

以下のチェックリストを参考に、自社に最適なストレスチェック代行サービスを選びましょう。

  • [ ] 法令に準拠したサービス内容か
  • [ ] 実施者(医師・保健師など)の資格や経験は十分か
  • [ ] 従業員が回答しやすい実施方法か(Web/紙など)
  • [ ] 集団分析の内容と報告書の質は十分か
  • [ ] 高ストレス者への面接指導体制は整っているか
  • [ ] セキュリティ対策は万全か
  • [ ] 費用対効果は適切か
  • [ ] サポート体制は充実しているか
  • [ ] EAPとの連携は可能か

導入までのステップ

ストレスチェック代行サービスの導入を検討する際は、以下のステップで進めることをおすすめします。

  1. ニーズの洗い出し:自社の課題や要望を整理します。法令遵守だけでなく、従業員の健康増進や職場環境改善なども含めて検討しましょう。
  2. 情報収集と比較検討:複数のサービスの資料を取り寄せ、比較表を作成します。必要に応じてデモや説明会に参加しましょう。
  3. 社内での合意形成:関係部署(人事、総務、産業医など)で協議し、導入の意思決定を行います。
  4. 契約と準備:選定したサービスとの契約を締結し、導入スケジュールを立てます。
  5. 従業員への周知:ストレスチェックの目的や実施方法、個人情報の取り扱いなどを丁寧に説明します。
  6. 実施とフォロー:ストレスチェックを実施し、結果に基づいたフォローアップを行います。
  7. 効果測定と改善:導入効果を測定し、必要に応じてプロセスやサービスの見直しを行います。

代行サービスの効果的な活用のために

最後に、ストレスチェック代行サービスを効果的に活用するためのポイントをいくつか紹介します。

  1. 単なる法令遵守に留めない:ストレスチェックは法令遵守のためだけでなく、従業員の健康増進と組織パフォーマンス向上のツールとして活用しましょう。
  2. 結果の活用:集団分析結果を活かして職場環境の改善につなげることが重要です。結果を「見るだけ」にせず、具体的なアクションにつなげましょう。
  3. 継続的な取り組み:メンタルヘルス対策は一過性ではなく、継続的な取り組みが必要です。年に一度のストレスチェックだけでなく、日常的なケアも大切にしましょう。
  4. EAPとの連携:ストレスチェックとEAPを連携させることで、より包括的なメンタルヘルス対策が可能になります。従業員の悩みに寄り添うLivelyEAPのような専門サービスの活用も検討しましょう。

適切なストレスチェック代行サービスの選択と効果的な活用が、従業員の健康と企業の発展につながることを願っています。

参考文献

  1. 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(2023年更新)
  2. Grand View Research「Workplace Stress Management Market Size Report」(2024年)https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/workplace-stress-management-market
  3. 国際労働機関(ILO)「Psychosocial risks and work-related stress」(2014年)https://www2019.ilo.org/global/topics/safety-and-health-at-work/areasofwork/workplace-health-promotion-and-well-being/WCMS_108557/lang–en/index.htm
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